寮長経験者が《自治寮》のメリット・デメリットについて語る。

僕は大学3年から4年のころ、北海道大学の北晨寮で半年間寮長をしていました。

親元を離れて寮で生活することは最初は不安でしたが、寮で生活したことで様々な経験をすることができ、今では寮生活をしてよかった!と思っています。

そこで今回は、高校を卒業してから、大学の自治寮に入るか、それとも一人暮らしをするかで悩むと思いますが、そのような方向けに寮長を半年間していた僕が感じた【自治寮】のメリット・デメリットについてまとめます。

自治とは?

自治寮について説明する前に、まずは「自治」について説明します。

まず、寮では、お風呂、トイレ、キッチンなど色々な場所や物を共同で利用しています。つまり、寮での暮らしは、「共同生活を前提にしている」ということです。

でも、共同生活をする上で考え方の違いなどから色々な問題が出てきます。それは、個々人の欲求の衝突です。こんな問題が発生したら、利害を調整して、お互いの利益を最大限に満たそうとする必要があります。

その手段として寮は、「当事者だけの話し合い」が一番良い方法だと考えています。当事者というのはこの場合、寮生のことをいいます。

寮生同士で話し合いをして、自分たちでルールを決めよう、というのが自治の考え方になります。

ここでは「だけ」というのが重要で、寮生ではなく施設の管理者である大学側の都合が自分たちの寮生活に影響を与えるのは最善ではないと考えています。

つまり、自分たちは大学を挟まずに「寮生だけで寮運営をする」こと、これが「自治」ということです。

だからと言って、何もかも寮生の好き勝手にやっていいというわけではありません。

寮はもともと経済的に苦しい人に対して、教育の機会を等しく保障するために建てられた住居なので、この大前提を崩すような運営活動はできません。このことをしっかりと認識した上で、必要に応じて大学側の要求に対して寮生の総意を伝え、話し合いをしながら、寮運営を行なっています。

自治寮とは?

先ほどの説明で、イメージが少しついたかと思いますが、改めて、自治寮ってどんな寮なんでしょうか?

自治寮(じちりょう)とは寮生自らが管理運営に関与している学生寮のことである。自治寮には必ず学生自治組織(以下、寮自治会)が存在する。一方、寮生以外の第三者、例えば学校が全面的に管理運営している学生寮を管理寮(かんりりょう)と言う。(Wikipediaより引用)

要するに、寮生がいろんなことを全部自分でやろう!ってことで自治会という組織を作って、その組織が一体となってお金の管理をしたり、イベントを企画したりする寮のことです。

そして自治寮との対比として、管理寮はざっくりいうと「学校が全面的に管理運営している寮」のことをいいます。

日本四大自治寮とは

歴史があり大規模な日本の大学の4つの自治寮のことです。
一般に、以下の4つを指します。
北海道大学恵迪寮
東北大学明善寮
東京大学駒場寮(廃寮)
京都大学吉田寮

あんまりこのような説明をしても、イメージがつかないので自治寮の存在意義から、イメージをつかんでもらおうと思います。

 

自治寮の存在意義

そもそも自治寮はどのようにして生まれてきたのでしょうか?

根底にあるのは対外的・対内的の両面がありますが、今回は対内的な存在意義について説明します。

対内的意義とは、すなわち「寮の中で自治が存在している意味」ってことです。

僕が住んでいる寮は100人近くの寮生が住んでいますが、もし自治会がなかったらどうなるでしょうか?

自治寮があることで

文化常任委員会が、新入寮生を歓迎し様々な企画をしていたりしてくれていたおかげで寮内での交流が活発になり、そのおかげで寮の人と仲良くなることができていました

寮生委員会が、大学の代わりに「寮費の徴収」をしてくれることで、わざわざ個別で大学に出しに行かず寮内でお金を払うだけで済むようになりました。「洗剤やゴミ袋のような日用品の購入」をしてくれるおかげでみんなが各々買いに行く手間がなくなり効率的に生活することができるようになりました。

アルバム委員会がみんなの写真を撮ってくれることで、寮生活の思い出を写真にいっぱい残せるようになりました。

・寮生どうしで問題があると、監査懲罰委員会が仲介して寮のトラブルを円滑にしてくれていました。

自治寮なくなると

・寮内の交流が減る→共同生活していても希薄な交流に…。

・日常生活の掃除・洗濯・食事を各々がすることになる→共同部分の掃除をどうするのか、洗濯の使い方などのルールはどうするのか自治会がないので決めることができない…。

・寮内のトラブルに対する対処がばらばら→場合によっては警察沙汰になるかも…。

こんな感じで、いろんなことを自分たちでやるメリットはたくさんあります。

そういう理由で自治寮ができあがったんです。

自治寮のメリット

さて、そのようにできた自治寮で生活するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

共同生活をするので寂しくない!

これが一番のメリットではないでしょうか。

共同生活をしているので家に帰ったら誰かが絶対にいます。

帰っても一人である一人暮らしよりもその点では寂しくないのが良いところだと僕は寮生活をしていて感じました。

それに風邪とかを引いた時にも看病をしてくれたり、逆に友達が風邪を引いた時も看病をしてあげることができたり、助け合って生活することができます。

寮費が安い!

これも結構大事です。毎月の家賃が一人暮らしより安いんです。寮では「寄宿費」と呼ばれているものがありますが、僕の寮では毎月一律7000円です。

北海道でも東京とかに比べたら家賃の相場は低いですが、それでも30000円とか。

それに比べたら7000円って安すぎですよね!毎月何もしなくてもかかる費用を節約できるのはすごく魅力的です。

立地と施設が良かったりする。

僕が住んでいる北晨寮は学校からは遠いですが、ほとんどの寮は学校の近くに併設されています。そのため、交通費がかからないことが多いです。

それに施設がよければ、大浴場があったり、大型のテレビで映画を見ることができたり、バリスタでコーヒーを飲むことができたり、卓球台を使うことができたりと一人暮らしではしづらい生活をすることができます。

先輩・後輩との繋がりで様々な情報が手に入る!

例えばですが、寮生だけで回しているバイト(居酒屋)とかもあります。そのバイトの情報だけでなく、過去問も寮内で出回っていたり、研究室配属のときにここの研究室はこんな感じ!といったようなことが気軽に聞けるため、先輩・後輩の繋がりで様々な情報が手に入るんです。

良い意味でも悪い意味でも、寮は結構閉鎖的なのですぐ噂が広まったりもします。

●●さんが〜〜さんと別れたとか、最近▲▲さんが不登校になったとか…。そんなような話は日常的に寮生と話している人であれば情報量が多いでしょう。

防犯がしっかりしている

寮には管理人がいたり、自治会の人が店番をしていたりと、一人暮らしよりも人がいるので安心です。防犯がしっかりしているのは女性にも嬉しいメリットですね。

他にも寮の形態によっては様々ありますが、共通するところはこんなところかなーと思います。

自治寮のデメリット

それでは、次にデメリットを述べていきます。

寮生と生活リズムが合わないと精神的にきつい

寮によって違いますが一人部屋でない場合2,3人で一部屋を生活することになります。

部屋が一緒の寮生は特に、生活リズムが合わないと精神的にきついでしょう。

また、活発な寮生は夜中に麻雀やゲームをしたり飲み会をしたりするので、真面目に勉学に勤しみたいと思った場合、それが誘惑や妨害につながる可能性があります。

1人の時間を作りにくい

前の項目とも被りますが、一人の時間を作りにくいです。

寂しくないけど、一人の時間が全くないのも辛いですよね。

特に、思い悩んでいるときや疲れているとき、何も考えずにぼーっとしておきたいときなどには周りに人がいるだけでもストレスに感じてしまうかもしれません。

風呂掃除の当番などがわずらわしい

僕の寮は平日は風呂掃除、床掃除を寮母さんがやってくれているのでゴミ捨てくらいしかないですが、そうでない場合は風呂掃除などの当番はわずらわしく感じるかもしれません。また、寮生は基本的に汚い人がいるとその人を基準として周りの環境が変わっていくので、綺麗好きの人には向かないです。洗濯機も共用なので、それを不快に感じる人は寮生活をするかもう一度考え直した方がいいです。

門限があると飲み会などのときにきつい

僕の寮はナンバーキーなので門限はないですが、門限がある寮もあるみたいです。

その場合だと、門限が過ぎると最悪の場合退寮させられることもあるみたいなので、飲み会などで遅くまで残ったりすることは難しくなるかもしれません。この件については入寮前に必ず確認したほうがいいです。

長期休暇時に寮が閉まることもある

学校がある日は寮があいていますが、長期休暇に入ると寮が閉まるということもあるみたいです。僕の寮はまったくないですが笑。

高校生の予備校の寮とかだとこのようなシステムがあるのかもしれません。

その場合、それに合わせて帰省・旅行をしなければならなくなります。

自炊はできるが、共用部分なので混んでて使えない時もある

自炊はできます(もしかしたらできないところもあるかもしれません)が、誰でも使えるので夕食を作る時間が被ることもあります。その場合は、待つ時間などがうまれ少しイライラしてしまうことも。

先輩になると後輩におごることが多くなり出費がかさむ

僕の寮では「ごっつぁん」という文化があります。

「ごっつぁん」とは先輩が後輩にご飯とかを奢ることです。

ごっつぁんをするか、いつまでするかは寮によって違い、全くしないところもあれば新歓期だけ、1年中といった感じで様々です。

この文化は後輩の間は良いのですが、先輩になると出費がかさんでしまうのが現状です。

この文化はそもそもかわいい後輩のために「奢り」、そして後輩はそれを「感謝する」という関係から成り立っているものです。嫌々ごっつぁんをするべきでは僕はないと思いますが、それでも寮生のほとんどがやっていた場合、ごっつぁんをしないともいいにくい環境だったりします。

規則が多い

規則が多いのも特徴です。特に多いのは「寮外生の出入り禁止」とかですかね。

あと、「男女間の部屋の移動」も禁止されているところが結構あります。

僕の寮でもそのような決まりがあり(制限の強さは寮によって違う。規則があるけどゆるーいところもある)、入寮時に先輩から伝わりその規則が今でも続いています。

寮に住むかどうかを考える基準

メリット、デメリットを踏まえた上で、寮に住むかどうかを考える基準についてまとめました。

一人の時間を常に欲しいかどうか

この問いに対して、Yesと答える人には寮生活は厳しいかもしれません。一人の時間が”常に”手に入るとは限らないからです。

寂しくないぶん、自分一人の時間が必然的に少なくなる(もしくはゼロになる)のでそこを許容できる人であることが条件といえるでしょう。

何を大切に大学生活を過ごしていきたいか

寮での生活はハマるとすっごく楽しいです。みんなとご飯に行ったり、夜通し飲んだり…その生活は今後社会人になっていきていく上でも大切なことを学べると僕は思います。

しかし、勉学一本で大学に来たのであれば話は別です。

どうしても勉強だけをしたいというのであれば、寮に住むのはおすすめしません。(寮の形態にもよりますが、だいたい寮に住んでいる以上自治会に所属していることになるので様々な制約を受けることになります)

勉強できる環境は、一人暮らしのほうができると思います。みんなで勉強するのが好きな人などは違うかもしれませんが、一人でコツコツやるタイプならなおさらです。

ですが、近くに図書館などがあれば、この問題はある程度解決できるかもしれないので、寮周辺の環境についてもチェックすべきです。

人と話すことが好きか

人と話すことが好きな人は寮をおすすめします。いろんな人と話せるので寂しくもないし、情報もたくさん手に入り、友達もたくさんできます。いいことづくめです。

もし、人と話すのがあまり好きではない人、苦手な人は、寮生活で苦労するかもしれません。性格の合わない人とどう過ごしていくかなどといった問題もあります。

どちらにしても共同生活をする以上、人と話す機会は多くなるのでこの点は一つの基準となります。

自治意識の強い寮かどうか

これが基準としては大切です。

自治意識が高い寮だと、強制的にどこかに連れて行かれたり、ご飯で食い極をさせられたりします。会議も夜遅くまで参加しなければならなかったりと強制感が出てしまうので、その強制感がどの程度のものなのかは知っておかなければなりません。

自治会に携わりたいという人はむしろ自治意識が高いほうが色々やりやすいかもしれません。みんなやる気なので面白い経験ができると思いますよ。

金銭的な問題

寮費は一人暮らしよりも少し安いので、金銭的に厳しいかどうかも基準の一つでしょう。

まとめ

色々述べて来ましたが、結局のところは寮にいる人との相性で決まります。

もし、不安があるときはぜひその寮に見学しに行ってみてください

(アポを忘れずに!アポをしないでくる人が多くて寮長のときは困りました笑)。

 

ひよこん